鐘とスパイの夜

除夜の鐘を撞きたい。

 

神戸に来てから、一度も鐘が撞けてない。

 

さすがのGoogle先生も、町内レベルのローカル寺院が除夜の鐘をオープンにしてるかどうかまでは教えてくれない。

(有名どころの寺は教えてくれるが、有名どころの寺の近所に住んだ事がない)

 

嫁子供が寝た年越しの夜、スマホ片手に外出。寺は何処にあるのか、どの方向から、どの大きさで鐘が聞こえるのか。…わからん(笑)

 

ふと、微かに焚火らしき匂い…。山側から?

 

何処かの寺の境内で焚火してるんじゃないか…

夜中の住宅街で燻る匂いとかね、除夜の鐘で起きてる寺か不審火ぐらいだろうと。

 

当たりつけて、山側の寺を目指す。

ついに焚火と小さな寺、鐘楼を発見(感動)

 

ここで問題発生。

 

お堂の前で和気藹々と鍋を囲むファミリー的な面子&喋りながら焚火を囲むオッサン2人。

そして丸裸の鐘楼…。

 

そう。

 

マジで鐘を撞いていいのか?

 

寺の小ささと、家族的な雰囲気が、敷地に入っていいんだか悪いんだか…微妙な…。

 

『こんばんは、すみませーん!鐘、つかせて貰ってもいいですかー?』

 

と、聞けたら山田は苦労しない(笑)

 

とりあえず、常連っぽい顔で焚火に当たりながら偵察することにした(笑)

 

そうこうしてたら、パラパラと鐘を撞く人達。

見るべきは一つ、志願者が山田と同じアウェイかどうか。

 

1組目、小学生の姉ちゃんと弟。

子供だけでデカイ鐘を撞くには勇気が要る。モジモジ、棒を振りきれない姉弟を見て、焚火に当たってる親父が『はよしいな(笑)』と。

この親父が住職だな、と薄々…。

この馴れ馴れしさ、ホームか!騙されないぞ!(騙してない)偵察続行。

 

2組目。顔隠し&無言のテロリストみたいなカップル。

ボソボソ、モジモジからの鐘。周囲と会話なし、そそくさ寺から退却。溢れるアウェイ感!

もう一組だけ…様子見…

 

3組目。男1人、躊躇一切なし、鐘楼上がってしっかり撞いて、さっさと退却。完全アウェイ。

 

イケる、間違いない(笑)

 

満を持して、常連のフリした虚勢の焚火を離れ、山田が登楼。さも知ってたかのように鐘を撞いて、さも当然のような顔の下で渾身のガッツポーズ。

 

念願かなって、ご満悦で帰宅。

鐘を撞く前から煩悩だらけでも、とても気持ちが良かった。また来年も…